非常放送

小規模建築物でも、不特定多数が出入りする「百貨店」「福祉施設」等では、収容人員が20人を超えると、非常警報器具の設置義務が発生します。また、常に騒音の発生するおそれがある「スタジオ」といった建築物も、同様に非常警報設備の設置が必要になります。非常警報器具は、携帯拡声器や手動サイレンなど、比較的簡易な器具で良いことになっています。

しかし、不特定多数が集まる商業施設や宿泊施設などでは、ベルやサイレンを突然鳴動する警報方式では、大音響によるパニックが発生する可能性があります。避難中の二次災害などの原因となるため、感知器の発報を確認するという緩和放送の後、火災発生を知らせる放送を鳴動させる二段式の警報方式が採用されています。

非常警報設備における非常放送

非常警報設備における非常放送は、昭和44年3月の消防法施行規則改正により、基準が定められました。従来の非常警報設備は「サイレン警報」によるもので、自動火災報知設備による連動により、「火災がどこかで発生していると思われる」という意味合いの警報しか流すことができませんでした。

特に大規模な施設でも、サイレンが一斉に鳴動するのみであり、非火災か火災かわからないまま避難を強いられ、避難誘導のベル音やサイレン音は、特に大規模施設ではパニックの元になるため、火災警報による避難時の二次災害につながるおそれがあります。

放送設備が設置されていたとしても、自動で放送することができない設備では、火災が発生した場所を的確に把握し、避難放送を流すのは経験・技術が必要です。どの階で火災が発生し、避難しなければならない火災なのかを的確に把握し、避難を促すには高度な技術と経験が不可欠です。

こうして、従来「サイレン」による非常警報であったものを「音声放送」に変更し、「何回のどのエリアで発報したか」「避難すべきか、非火災か」という内容が明確に把握できるようになり、パニックとならないよう考慮された設備となっています。

非常放送設備の設置基準

建築物への収容人員が数百人を超えるような大規模建築物では、非常ベルやサイレンが突然大音量で流れると、パニックを起こす可能性があります。このような建築物では、音声による火災警報を行うための、非常放送設備の設置を義務付けられます。

非常放送設備は、緊急放送を明瞭に聴視するため全区域にスピーカー配置します。スピーカーは10mの範囲で包含するように規定されており、この範囲を全区域が包含するように配置していきます。階段や傾斜などでは垂直距離15mにつき1個以上設置します。非常用のスピーカーを設置した場所には、ベルやサイレンを設置しなくても良いという免除規定があります。

ひとつのスピーカーがカバーする範囲は半径10m以内ですが、隣接する小規模区画にそれぞれスピーカーを設置するのは合理的ではないため、以下の放送区域は、スピーカーの設置が免除されます。

  • 居室で6㎡以下の放送区域
  • 居室から地上に通じる廊下、その他の通路で6㎡以下の放送区域
  • 30㎡以下の非居室(倉庫・便所・更衣室・機械室など)