粉末消火設備
粉末消火設備は消火粉末を火源に大量放出することで、燃焼面を覆い空気遮断による窒息効果を有しています。粉末消火剤は火災の熱により分解し、発生する不燃性の炭酸ガスによって空気中の酸素濃度を下げます。また粉末は輻射熱を遮断し、化学作用によって燃焼の連鎖反応を中断する負触媒効果(抑制効果)も兼ね備え、これらの効果により油火災、液化ガス火災などを速攻消火できます。
粉末消火設備の特長
- 大量の消火薬剤を短時間で噴出することにより強力かつ迅速な消火効果を得ることができます。
- 瞬時に消火が可能であるため、危険物や指定可燃物などの燃焼拡散が早い対象物の消火設備に最適です。
- 薬剤は電気絶縁性に優れており、変圧器などの高圧電気設備にも使用可能です。
- 消火薬剤は消火後容易に清掃できるため、火のおよばなかった機器を損傷することがなく、汚れ損も少ないため経済的です。
- 正規貯蔵をしている薬剤は変質の心配がなく、消耗部品も少ないため、長期間取替えの必要がなく維持費が経済的です。
- 消火薬剤は気温に左右されないため性能に変化がなく寒冷地でも使用できるため、水消火設備と比較して大きな利点があります。
- 機構が簡単なため、設備の維持管理が容易です。
- 窒素ガスにより加圧して薬剤を放出するため、操作電源が故障した場合でも手動で放出することができます。
粉末消火薬剤のはたらき
- 連鎖反応の遮断効果
化学作用によって分解された薬剤が負触媒効果(抑制効果)を発揮し、火災の燃焼連鎖反応を阻止します。この効果が消火に最も寄与しています。 - 冷却効果
粉末薬剤が熱により分解する際の吸熱作用による効果です。 - 被覆効果
燃焼面を覆い空気を遮断する窒息効果があり、第3種薬剤は化学作用の分解時に生じる粘着性物質が燃焼物の表面に付着することで、燃焼物への酸素供給を抑制する効果もあります。 - 希釈窒素効果
粉末薬剤が熱により分解することで発生する炭酸ガスが空気中の酸素濃度を下げる効果があります。
粉末消火薬剤種類と適応火災タイプ
種類 | 第1種粉末 | 第2種粉末 | 第3種粉末 | 第4種粉末 |
---|
主成分 | 炭酸水素ナトリウム | 炭酸水素カリウム | リン酸塩類 | 炭酸水素カリウムと尿素 |
---|
特長 | *** | *** | *** | *** |
---|
外観色 | 白色/淡青色 | 紫色 | 淡ピンク色 | 灰色 |
---|
消火作用 | 連鎖反応 | ○ | ○ | ○ | ○ |
---|
冷却効果 | ○ | ○ | ○ | ○ |
---|
被覆効果 | | | ○ | ○ |
---|
適応火災 | 一般火災(A) | | | ○ | |
---|
油火災(B) | ○ | ○ | ○ | ○ |
---|
電気火災(C) | ○ | ○ | ○ | ○ |
---|
粉末消火設備の適用対象物
- 石油/ガス関連施設
- 船舶
- 消防車・消防艇
- 発電・変電施設
- 製造
- 駐車場・格納庫
- その他燃料施設
システム構成と放出方式
固定式
- 全域放出
固定されたノズルから密閉された防護区画内の全域に所定濃度の消火薬剤を均等に放出し、消火する方式です。主に、不燃材料で造られた床、壁、天井、屋根で仕切られた密閉構造が可能な構築物などに用いられます。
設置箇所:駐車場・変圧器室・ボイラー室・電気室・危険物施設など - 局所放出(オーバーヘッド放出)
防護対象物に対し、固定されたノズルから直接消火薬剤を放射する方式で、防護対象物とその周囲を包含するように消火する方式です。
設置箇所:油タンク・ボイラー・油ピット・変圧器・ブースなど - 局所放出(タンクサイド放出)
上面開放タンクなどの側面に設けたノズルから火災面とその周囲を包含するように水平に消火薬剤を放出します。
設置箇所:油タンク・ボイラー・油ピット・変圧器・ブースなど - モニターノズル
手動あるいは安全な場所から遠隔操作でノズルの筒先を移動させ、防護対象物に向けて消火薬剤を放射する形式です。大量放射を必要とする格納庫などの防護に用いられています。
設置箇所:バース・航空機格納庫など
移動式
- ハンドホースノズル
ホース先端にあるノズルを手動で操作し、防護対象物に向け消火薬剤を放射する形式です。
設置箇所:屋上駐車場・駐車場・危険物施設(貯蔵所・製造所・危険物取扱所)など